入学前の天が選んだのはドラえもんみたいな色のランドセルだったけど、
同じ幼稚園からのお友達は皆、女子は赤かピンクで男子は黒か紺だった。
「みんなと違うといじめられるよ。」と教えて選ばせたのだと
母親たちが得意そうに話していた。
「みんなと違う」のは「いじめられる」という思想がまだ、
そんなにちからを持っているのか、とわたしはショックだった。
天に、ドラえもんみたいな色のランドセルを背負わせていいのか、
それは、天にとってものすごい重荷になるのではないか、
と、毎日悩んだ。
入学式前にはいよいよ不安で泣いてしまうくらい悩んだ。
まあ、結果からすると、あんなに悩むことなんてなかったのだ。
ランドセルの色なんてぜんぜんたいした問題ではなかった。
天は「みんなそれぞれみんなと違う」のは当たり前だ、と
考えられるくらいにつよくなったし、
ものすごくやさしい気持ちのお兄ちゃんになった。
もうすこししたら、みんなと同じ制服着た中学生になるのね。
毎日見送ったこの姿も見納めだなあ、と、記念の一枚。