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評価:
キャロル・オフ
英治出版
¥ 1,890
(2007-08-27)
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「安い」食べ物がどうして「安い」のか、よーく考えてみよう、という啓発が多くなされるようになったように思う。(コスト削減による利益拡大の構造は食べ物に限ったことではないけれど。)
アニメ『ワンピース』のロビンちゃんは歴史を愛しているというキャラクターで、いつも分厚い歴史書を読んでいるのだけど、わたしは学生時代、歴史の勉強がとっても苦手だった。とくに世界史!!ひとの名前が最初の一文字めしか覚えられなくて、ちんぷんかんぷんを極めたのだった。
そうしてそのまま、中南米の国々とヨーロッパとアフリカの関わりのことなど何も学ぶことなく大人になってしまったのだけど、歴史ってこんなにもおもしろいんだ!と本書によって開眼させられる。
とくにマヤ・アステカの時代に始まるチョコレートの魅惑の歴史から、<工場>が生まれ、<工場で働く人>が住む町ができていく過程の書かれた前半がとてもおもしろく興味深かった。(
『チャーリーとチョコレート工場』は<チョコレート工場>でなければならなかったんだ!)
全編の根底にあるのは、カカオの生産に適した環境と労働力という資源があるための悲劇。おぞましい利権にむらがる人々の騙しの手口と、腐った政治により巧妙に隠された真実を掘り起こす正義。
●カバー折り返し部分「私の国には学校へ向かいながらチョコレートをかじる子供がいて、ここには学校にも行けず、生きるために働かなければならない子供がいる。少年たちの瞳に映る問いは、両者の間の果てしない溝を浮かび上がらせる。なんと皮肉なことか。私の国で愛されている小さなお菓子。その生産に携わる子供たちは、そんな楽しみをまったく味わったことがない。おそらくこれからも味わうことはないだろう。・・・これは私たちの生きている世界の裂け目を示している。カカオの実を収穫する手と、チョコレートに伸ばす手の間の溝は、埋めようもなく深い。」(本文より)