また、天だ。
9歳の子どもとこんなになって喧嘩するわたしはアホだ。
○
昨晩、天が解いた宿題の漢字プリントが、20問中7個くらい間違ってたのを指摘したのが発端だった。
「はーい、これとこれとこれとこれとこれとこれ、間違ってるよ。」
そうしたら、また天がさ。
「やった意味がない、ぜんぶ無駄だった。」
って暴れ泣くんだわよ。
まあ、その前から、夕食のハンバーグ食べるときにも、天と月がずっとすっごいくっだらないことで喧嘩してて、わたしも天も月も三人とも機嫌が悪くなっていたんだけどね。だって、煮込みハンバーグ、おいしいんだよ。なのにそれを食べながら、子どもたちはずっと喧嘩してたんだもん。
今度は天とわたしとが言い合いになって、あげくの果てに、天が
「ママはぼくが嫌いだからそんな意地悪を言うんだ。」
って言い出したのにブチ切れたわたし。
「わかった、それはこっちの台詞だよ。
意味がなかった!全部無駄だった!天がママのことを嫌いなんでしょ!!
ママが間違ってた。ママが天のことを可愛がり過ぎて甘やかし過ぎた。
だから天は同じことを何回でもやったあげくに、ひとのせいにして、
そうやって何回でもあんにゃあんにゃ言うんだよ。
天はそれでも許されるって思ってるんだよ。
今日は、ママは、天を許さない!!!!
ママはもう、天の面倒を一切見ない!!!」
と言い捨てて、月とお風呂に。
三分間でもひとりでいられない天。
お風呂場に来てかちゃかちゃドアを開ける。
わたしは怒ってばたばた閉める。
天は何度でもかちゃかちゃ開ける。
「いい加減にしなさい!!」と怒鳴るわたし。
「ママ、ママ、ママ、
ぼくもお風呂に入りたあいいいいぃ。」泣きわめく天。
通報されそうな大騒ぎであったが入れなかった。
入れ替わりで、ざぶざぶっと風呂に入り、1分であがってくる天。
「ママママママママママママママ、許して。ぼくを許して。」
「いやだ。ママは、今日は、天を許さない。」
「うおおおおおおぉん。」泣き崩れる天。
ひとりで布団の中で、小さくなってあっというまに眠りに落ちた。
ああ、また、こんな夜だ。
天とわたしは、どうしてこんなことになっちゃうんだ。
落ち込むわたしは眠れない。
真夜中にうなされて「やだ。もう、離して。」と、
寝言を言う天をふわっとさわって抱きしめる。
○
夜明けが来ない夜はない。
「天。今日もママと喧嘩する?」と聞いて起こす。
「喧嘩しない。」
「じゃあ、仲直りする?」と抱き上げる。
「うん。」膝の上で丸まる天。
「あのね、ママ。
ぼくね。昨日の夜ね、ずっとね。あのね。
迷子になった夢を見てたんだよ。」