ここんとこ数カ月ほど、顔の状態が悪かった。
たしか頬や顎が痛痒くぼこぼこともりあがって、粉が拭くのから始まったと思う。それとも口唇炎からだったかしら。口の周りの皮がスジ状に剥けたり、ぼちぼちと顔のあちこち赤く盛り上がって痒かったり、目の周り、口の周りがただれて膿んだり。そんな繰り返し。
肌荒れ程度の状態ならメイクすればカバーできるのだけど、耐え難いのは顔の痒さだ。眠っているあいだにかきむしってしまい、朝起きたときの顔はまるで、殴られたオバQ。
その皮膚が再生する間もなくまた掻き壊してしまうのでどうしようもない。
もともとがアトピー肌なので、病院で処方されていた手持ちの薬をいろいろ持っていて、それらを適当に塗ったり塗らなかったりで過ごしていた。ああいうときに、慢性疾患だからとあきらめて、自分でなんとかしようと思ってしまうのは何故なんだろう。
忙しくて病院にいけないときほど悪化して、病院に行けるくらいの時間ができたときには、小康状態になるシーソー状態。皮膚の状態が悪くなっているときにこそノーメイクで病院に行かなければならないのはわかっていても、そんなときには病院にも行きたくない。
ノーメイクであろうがなかろうが、本人以上に他人は気にしないものだろうけれどさ。殴られオバQみたいな状態でのすっぴんなんて他人に見られたくない。瞼が赤く腫れてしまうときには人相まで違って見えて、とくに落ち込む。
鏡を見るたびに、がたりがたりと落ち込む気持ちとぼこぼこの皮膚ををメイクでごまかして過ごしてた。わたしにとって、お化粧は重要なんだわよ。
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先日、心身すこし落ち着いたところで時間ができた。ついに朝から意を決して、子ども達に宣言。「ママは、今日こそ、皮膚科に行くわよう。」ノーメイクにてかかりつけの皮膚科に行く。
白衣のオッサン先生、わたしの顔とカルテを見比べて、「あら〜。」と、おっしゃる。
「カブレちゃいましたね。原因に、思い当たることはありませんか?目の周りや口の周りに、とくべつ、何か塗ったりしませんでしたか?」
「いえ〜。先生、思い当たるも何も、数カ月こんな状態なんですよ。よくなったり悪くなったりで。どのあたりから始まったのかも、よく覚えていないんです。
また脂漏性湿疹が出たのかと思って、以前に処方していただいたニトラゼン軟膏を塗ったり、子どもに処方していただいていたステロイドを塗ったりしていたんですけど、今はワセリンだけ塗ってます。」
「あらら。脂漏性湿疹と思っちゃったんだ。これはね、カブレですよ。なにかカブレるようなものに思い当たりませんか?」
「う〜ん。」思い当たるものを特定できない。
「脂漏性湿疹とカブレはね、見た目はわたしたちが見てもほとんど同じ。でも、出る場所が違うんですよ。」
と、症例写真を見せて下さる。
「はああ。なるほど、目の周りやなんか、こんな感じでした。」と、わたし納得。
「とにかくね、何ヶ月もね、あなた、つらかったでしょ。もっと早く来ればよかったですよ。まず、ステロイド内服したほうがいいね。あと、塗り薬を出しておきます。1週間後にまた来てください。」
自分で勝手に判断してむちゃくちゃな薬の使い方をしていたのに、『つらかったでしょうね。』なんて言っていただけるとは思っていなかった。うれしかった。
チムケント錠20とプレドニン5mgとビトラ軟膏を受け取って帰宅。使うと一晩で、赤みも痒みもでこぼこも消えた。なんだ、と思う。どうしようもなくなる前になんとかなることってけっこうあるじゃないか。
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帰宅してきた天が何気なく言う。
「ママ、今日、病院行ってきた?」
「うん。行ってきたよ。あのね、カブレだって。お薬飲んだら治るって。」
「そう。
なんかへんな病気じゃなくてよかったね。
ぼくはね、ママがすごい病気になったかって、心配してたんだよ。」
「天。
ママ、すごい顔だったもんねえ。
黙って心配してくれてたんだね。
ママは、天の気持ちがうれしいよ。ありがとう。」
こころから、ぎゅっとする。
子どもはこうしておかあさんを抱きしめてくれる。