春休みにはどこに出かけても、たまごっちを首からぶら下げている子どもが目に付いた。当の子どもはたまごっちを育てているつもりなんだろうが、わたしから見るとたまごっちに飼われているのが子どもだよ、なんてな冗談をよく言っていた。
わたしはたまごっちを含めて、携帯型ゲーム機がきらいだ。というよりも携帯型ゲーム機で遊んでいる子どもの姿を見るのがきらいだ。小さい子ども同士が数人もいて、ぶつかりもせず身体も使わず汗もかかず涙も流さずに何時間でもちいさなゲーム機に熱中している姿を見ると、感覚的にぞっとする。
天が幼稚園から一年生になった頃には、ゲームボーイアドバンスが大流行していて、お勉強系幼稚園に通っていた天のまわりは、そのゲーム機がなければ遊べない子どもらばかりであった。そのゲーム機を持っていなかった天は、実際にこてんぱんに仲間はずれにされるような状態が数年続き、かなりかわいそうだった。
天はゲームがだいすきで、しつこく友だちに貸してとせまっては、疎まれたり嫌われたり、すねて泣いたり、の毎日だった。すごくつらかっただろうし、苦労したと思う。あんなゲーム機くらいでそんなイヤな目に合うなら買ったっていいじゃないか、と何度か夫とも天とも相談した。
夫もゲームに関してはわたしと同じ感覚の持ち主だ。天もわたしたちの考え方は理解していた。「でも、天があんなにつらい目に合うのがかわいそうだ。アドバンスくらい買ってもいいんじゃないか、とパパ達は思ってる。天はどう思う?」と天に聞いた。天がそのたびに「僕はやっぱり我慢する」と言い、結局なんとか我慢してその時期をやりすごしたのだった。
今は天もゲームキューブとソフトを2本持ってる。一週間でだいたい6時間くらいやってるんじゃないかな?そういえば近ごろはアドバンスで遊んでいる子どもを見かけなくなったなあ。
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月が春休みにパパと散髪に行っているとき、わたしは天とスーパーにいた。会計の時に、レジ横に大量のたまごっちが売られているのを発見した。たまごっちは大流行していて生産が間に合わず、昨年のクリスマスの頃からなかなか手にはいらない、ウチはどこどこまで買いに行ったとか、並んで買った、というような話を、ママともだちから聞いていた。これを、月に買ってあげたら喜ぶだろうなあ、などとぼんやりと考えていた。
そこで横に立っていた天も、たまごっち発見。「ママ!たまごっちだよ!ねえ、月に買ってあげて。」と懇願してきた。「月が一年生になって、みんながたまごっちを持っていテ、月が仲間はずれになったらかわいそうだから。」と言うのだ。妹思いのにいちゃんだ。わたしはぐらりとこころが動いて、夫の携帯に電話して経緯の説明をした。
「いらんよ。必要ありません。」夫断言。
そう。そうだよそのとおり。たまごっち育てるなら球根でも育てたほうがよほどいいね。それから一ヶ月。たまごっち持ってる子どもも、近ごろはあんまり見かけなくなった気がする。
うちのきょうだいは、机の上で水栽培しているクレソンとペパーミントに芽が出て喜んでいる。ザリガニが脱皮して、その皮を全部食べていく様子に興奮してる。でっかくなったザリガニのあたらしい皮。赤くて黒くてかっこいいね。
今日はママ、大量の輪ゴムを手に入れてきました。これは二つ折りにして長くつなげるよ。ゴム飛びしようゼ。