月の耳の聴力の再々検査のため、また、大学病院に。雨のため、幼稚園まで車で迎えに行き、そのまま車で病院に向かう。雨の幹線道路は渋滞。月は助手席で、くうくうと昼寝。
今回は初めてわたしも一緒に検査室に。検査技師は、顔の皺の具合から判断するに、おそらくわたしと同年代の女性。
前回と逆の耳がすこし、聴こえにくい、との検査結果だった。前回の「聴こえない」を10のうち、5だとすると今回は10のうち、9。検査のたびに結果に大きくばらつきがある、とのことから、おそらくはやはり心因性の難聴、と診断されたようだ。そういうものなのだろうか。
「おかあさんは、月ちゃんの耳が聴こえないと思っていますか?」
「いいえ、実は、思っていません。普段はふつうに生活しています。」
「こうして、聴こえない、とか、身体で反応を示せるのは、SOSを訴えるって、そういう力があるってことですよ。」
「はあ。」
「月ちゃんは、発音にも問題があるようですが、これは最近からのことですか?」
「いいえ、ずっとこんな感じです。タ行とカ行とハ行の発音が全部同じで、本人も気にしています。来春から小学校に行くのに、うまくしゃべれないと、兄の友だちにからかわれたりして、少し不安なようです。あと、月はわたしのことがきらいだと言ってます。」
「おかあさんがそれだけ月ちゃんのことをわかっていればだいじょうぶだと思うけど。月ちゃん。おかあさんのことがきらいなの?」
「うん。」
「どうして?」
「怒るから」
「え、おかあさん、怒らなそうに見えるけど。おかあさん、仕事しているの?」
「いえ、専業です。」
「ああ、そっかー。今はおかあさんにもいろんなストレスがあるからねー。でも、月ちゃんは、おかあさんが死んだら困るでしョ。」
「えっ?うん。」
「そうだよねー。月ちゃん、おかあさんと南の島で暮らせたらいいね。それか、おかあさんと、月ちゃんと、しあわせでいられる方法を考えようね。」
YO!検査技師さん。先走りだよ。
さておき、主治医。また、白衣に穴が空いてるよ。
「検査結果から考えるに、やはり、心因性のものでしょうね。耳鼻科ではこれ以上のアプローチができません。小児科に紹介状をまわしておきます。小児科を受診してから、カウンセリングをうけることができますので、また、考えてみて下さい。」
○
うーん。。。たぶん。まずはしばらくは、そのカウンセリング、受けないとわたしは思う。幸せだとよく聴こえるって、月の耳らしい、と我が子ながら思うよ。そう、幸せだとよく聴こえるって、月の耳らしい、って、我が子だから、思うのか。