つい昨晩、「天が泣かなくなったねー。」という話をしたばかりだった。
天ったら、朝起きるだけで泣いてた。幼稚園に行くときにも泣き、押されても突かれても吹っ飛んで泣き、ほんのちょっとしたことを言われても泣き、友達と遊んでいても泣いて帰ってきて、さらに、月と喧嘩しても泣き、何はともあれ、ひいひいと泣き、あにゃあにゃと暴れ泣いてたのに。
「天ったら、一日三回は毎日泣いてたのに。近頃は、全然泣かないよねー。」と話をしたばかりだった。
今日は、算数の時間にも面積の問題で大活躍して、図工は3時間連続で版画を彫り、放課後の習い事の英語もたのしかったー!と、言ってたのに、ことの始まりは<挑戦>という漢字だった。
月が読もうとして読めないのを、天が説明して、教えようとしたのだった。
「ほら、まずは、いくさだよ。
いくさって、ほかのいいかたもあるでしょ。
よく、アメリカがやってるやつだよ。
ねえ、せんそうだよ。
せんそうのせんのじがこれなの。
それでね、ここは、ほら、くだもの。
くだもののなかで、月が好きなものがあるでしょ。」
と導き教えようとしていた天の質問のすべてに、月が「わかんない」と答えたのだった。
天には、読めない漢字がほとんどない。よほど難しいのは別だけど、それなりに難しいくらいの漢字だったら、文脈から読んでしまう。
ところが、月は読めないったら読めないし、わからないったらわからないのだ。
「もう!いいよ!
オマエはなんでもかんでもわかんないですませようとする!」
「だってわかんないんだもん!!」と、涙ぐむ月。
「そのうえ、泣いてごまかそうとするんだよ!
もういい!もういいよ!!!」と、涙を流す天。
「いいよ!意地悪!意地悪!!意地悪!!!」と怒る月。
「マジ腹立つ!ぶん殴ってやろうか!?」と泣き怒る天。
「誰もしあわせにならない喧嘩はやめてくれい。」
と介入するわたし。
それできょうだい喧嘩はとりあえず終わったのだが、まったく、その後なにをするにも天が浮き沈みしたのだった。ううむ。そう、数ヶ月前はまさにこんな日々が毎日だったと思い出す。
○
そうだ、こんな夜には絵本を読もう。
お風呂でよく温まったら、お布団に並んで入ろう。
まずは、『たのしいゾウの大パーティー』。
読み終わる前に、唇のはしっこにばら色の笑みをくっつけて月就寝。
もちろん上向いて、くかーっと。
さて、「天にだけだよ」と、読んでやる。
『いっぱいおっぱい』
「ママ、こういうのを僕のクラスで読んだらね、
きっと、みんながにこーとするよ。」
いつも選本に悩んでいるわたしを気遣っての発言なのである。
なんて、かわいいやつだ。
と、サービスでもう一冊。
『まてまてー!』
「ママ、
おもしろかった!
おもしろかった!!
おもしろかった!!!」
と3回繰り返して、にこーとしたまま、さっさと就寝。
横向いて、まるまったちいさな背中だ。
絵本と、子どもと、しあわせな時間。
わたしの唇の端っこにも、にっこり笑いがくっついてる。