朝自習の時間の読み聞かせ。今日は5年生。
高学年には、何冊かの本を持っていって選んでもらうのだけど、今日は、
「あ、この本、読んだことある!」
という女の子がいた。
「どれ?」と聞くと、
「これ。」と言う。
「ふううん。せんぶ読んだの〜?すごいねえ。」
って感心していると、別の子どもたちが
「これを読んで欲しい!」と言い出した。
で、読んだことがあると言ってた子に、この本でいいかと確認してから、読み始めた。
ジロジロ見ないで―“普通の顔”を喪った9人の物語
高橋 聖人,茅島 奈緒深
1年生だか2年生だかのころ、顔のアザのせいでいじめられてた藤井さんが、いじめっ子に会わないで帰れるように、何通りもの帰り道を考えていた、というところを読んだときには、声が震えて泣きそうになったけれど、なんとかこらえた。
まえがきから始めて、写真も見せながら、できる限り、ゆっくり読んだので、24ページまでしか読めなかった。チャイムが鳴ったので、読むのをやめて、本から顔を上げると、しずまりかえった教室の中のそこここに涙顔の子どもがいた。
「こっから先、読みたいと思う人は、自分で読んでみてください。漢字には振り仮名がついてるからね。図書館で借りても読めるよ。
でね、おばちゃんは、ちょっとだけ、自分の話しをします。
おばちゃんはね、昔、顔がアトピーでさ、薬をいっぱい塗ってて、あちこち皮膚が溶けちゃってて、黄色い汁がいつも出てて、いつもかゆくて、かくと皮膚がまたぼろぼろとれて、自分でもイヤだったし、電車に乗るのとかも、イヤだったの。
顔は隠せないからさ。こんな顔のひとが隣に座ったらイヤかもなあ、と思ったりして、ドアのところで、外向いて立ってたの。
そんなにひどいアトピーだったのに、だんだん治っちゃったんだけどさ、治るまでに、苦しい思いもしたんだよ。で、今になってね、苦しい思いもしてよかったな、って思うことがあるの。苦しんでいるひとの気持ちを、もしも自分だったら、って、ほんの少しでも想像したり、できるからね。
みんなも、これから大きくなるまでに、いろんなコンプレックスを持つことがあるかもしれないけど、その苦しさは、ひとりで抱え込まないでね。みんなの周りには、話しを聞いてくれる友達や大人がいるってことを、覚えておいてください。
では、今日も、よく聴いてくれてありがとうございました。」
と頭を下げると、ぱちぱちと拍手をもらった。
教室から出ていくわたしを、子どもたちは、かっちりした笑顔で見送ってくれたのよ。